2013年10月14日

花日記vol14

観賞の秋

今年の夏は長かった。
でも、いつのまにか庭では、石榴の実や山ぼうしの実が
いつになく大きく赤く染まり、たわわとはこのことかと。

重たげにしなる枝を切っては葉歩花庭に運び、
お客さんの目を楽しませてくれる。

あとは食すだけだが、鳥達の見極めに勝てるはずもなく、
残りものの福をもらおうと、毎日変わる赤を楽しんでいる。

この秋は、芸術の秋にふさわしいはじまりとなった。
葉歩花庭のお客さまでもある、
蒔絵アクセサリー作家、西本千恵さんの展示会が、
赤城神社のギャラリーで開催された。

夕暮れの赤城神社1.JPG

千恵さんのご両親は共に蒔絵師でおられた。
先代から受け継いだ伝統的な技法を
千恵さん自身はアクセサリーという形で蘇らせている。
千恵さんのパートナーである眞吾さんは、お酒を片手に、
「千恵さんの作品はシルクロードなんだよ。」と。

なつめと香合の数々.JPG 蒔絵お道具1.JPG

そう、どこか異国情緒を感じる、
アンティ―クのような風合いに、
手作業と古いものが、このうえなく好きな私は惹きつけられる。

光と影を感じる作品。
親から孫へ子へと受け継がれるもの。

千恵さんのアクセサリーへの考えは、着飾るものではなく、
身につけるものだという。その思いに共感。
その通りにお守りのような品格がある。
もの作りと同時に再生もライフワークとされている。

帯留め3.JPG ブルーアンバーペンダントヘッド.JPG

そんな千恵さんが、私の生けた花をとても好きだと
おっしゃってくれる、そのようなご縁から、
今回の展示会に花を添えさせていただく運びとなった。

何年か前までは、このようなお仕事をいただくと、
花市場に出向いて、よりめずらしいものを注文してみたり、
花屋さんをはしごしたりしていたが、
最近は、より自然なものしか目には映らず。

みな同じ表情をし、直立した茎をもつ、
自然体感のない花には魅力を感じない。

そこで自宅で育てたり、通勤途中のよそのお宅の庭を
横目で観察している。

いい花を見つけると、知ってるお宅なら即、電話。
知らないお宅は104、もしくは直接門をたたく(笑)。

都会で自然な花を手に入れるには、そんなに楽ではない。

それでも、みなさん最初は驚きになるものの、
お話すると、いつでもどうぞと、おっしゃってくれる。
植物好きは通じ合える。
嬉しくなり、とびきり気に入っているお菓子を持ってたずねてゆく。

今回は、話を聞いた母が、実家から
つや艶とした、わずかに緑の入った黄色に色づいた
椿の実をいただいてきてくれた。
葉はやわらかく、やはり黄みがかり陽だまりのような姿。

展示会3日目には、実がポトリと落ち、葉も一枚畳へ。

千恵さんは、そのままに「このままがいい」と、
こういう方のお仕事は、ほんとに楽しい。

入口には神社所有の大八車、
その足元に、千恵さん愛蔵品、朱の漆をほどこした大籠に
山採りされたドウダンツツジと、つる梅もどきや野ばらの実、
しおんをたっぷりと。
大八車が御所車に変わったとうれしいお声が届いた。

椿の実1.JPG 大八車3.JPG

そのほかにもギャラリー内には、自宅の石榴や、
千葉からマユミや秋草など。

千恵さんのお客さまも喜んで下さって、ただただほっとした。


それも束の間、千恵さんから次回は葉歩花庭でしましょうと。

そのお知らせは後日また。

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2013年01月06日

花日記13 正月の準備期間

日本の年末は忙しい。
クリスマスが終われば、ささっと、正月の顔をしなければならない。

店内はもちろん、外の花の仕事を持つ私は、
25日のクリスマスディナーのメインディッシュをお出しする辺りから、
店内のクリスマスソングは耳に入ってこなくなり、
頭の中は「もういくつ寝るとお正月〜」が鳴り止まない。

切株のリース.jpg

最後のお客さまをお見送りすると、店中のクリスマス飾りを外し、
ヒムロ杉やジュニパーべりー、檜たちに、
「お疲れ様、ありがとう」と別れを告げる。
「捨てちゃうのですか?」とスタッフが、
そうだね。切ないが、新しい生命を持ってするのが、
クリスマスにしても、正月にしても大切なこと。
造花では意味がない。

そして、三脚をかつぎ、いざ神楽坂テラスビルへ、

毎年のことながら、飾るのは心躍ること、
片付けはその反対にあるが、リセットされるのは心地よい。


さあ、これから正月の準備が始まる。
とは言え、店の営業もまだまだ、忘年会のお客さまが控えている。

一年間を労う、12月のお席は楽しげだ。
その様子に活気づく。

そんな営業時間の、合間をみての準備期間。
12月は座ることのできるのは、食事時間の10分くらいのこと。

おせちの材料が入った箱が、日に日に外に積み上がってゆく。
厨房からは、シェフの叱咤激励が響く。
「おせちには、和食のすべてが入っている。
何度も何個も連続的にこなすと、飽きたころには、
上手くなっているから」と、
スタッフは、黙々とこなしていく。

おせち札1.JPG
おせち盛り付け2.JPG おせち作成1.JPG


今年の12月は冷える、2月並だという。
外での作業には堪える。
ただ一日だけ、恵みのような暖かい日があった。
松を飾る前に神が降りてこられたのか?!
ありがたい一日に、一気に畳み掛ける。
正月花を飾る上で、最も大切なのは清めることだ。

正月花作成9.JPG 正月花作成5.JPG

思えば、早稲田店を立ち上げた2004年の暮れのこと。
ご近所の”松下”さん、
こちらは早稲田の鶴巻町で日本料理店を営む大先輩。
顧客の方の中には有名な方もたくさんおられる。
店主である松下利市さんには、さまざまなアドバイスをいただき、
たいへんお世話になった。

年末のご挨拶に”松下”さんに向かった。
その日は大晦日の午前中、おせちの受け渡し時間にあたっていた。

次から次へと訪れるお客さまに、
私たちは中に入れずにいた。
ただ茫然とその光景をすこし遠くから眺めていた。

発した言葉は、
「すごいね・・・お客さんが、わざわざ取りにきてくれるんだ。」
「うん・・」
「・・・・・」
「葉歩花庭もそうなれたらいいのにね。」

あの時の気持ちを忘れることはない。

だから、うちのおせちを受け取りにいらして下さるお客様を
清々しい場でお迎えしたい。

床を磨き、ガラスを磨き、タイルを磨いて、植木を整える。

そして、ようやく正月花を玄関に供える。
長寿を願う松、難を転ずる南天、成長を意味する青竹、
最後に「ん」が付くのは運に通じるというので、きんかんを添えて、
ずいぶん欲張りね(笑)と思いながら、
最後に、年神様に鏡餅をお供えする。
先祖代々・・の橙々、
お披露目を表す昆布、昆布の古名は広布(ひろめ)という、
柿の数は、いつもニコニコ仲むつまじくと、
2個と2個と6個で10個を供える。

玄関正月花.JPG 鏡餅.JPG

正月のひと品ひと品は、おせちも花も精神的なもの。

すべてを終え、お客さまを迎える準備が整った。

去りゆく年への感謝と、新たに迎える年への感謝を
お客さまに込めてごあいさつ。

お客さまは、取りに来てくださっている上に、
「徹夜なんでしょう!終わったから、ゆっくり休んで」なんて
どこまでも、おやさしい。
頭の下がる思いだ。

年のおわりにお世話になった方のお顔を拝見でき、
年のはじまりを、私たちの作ったおせちで祝っていただける、
なんて最良の日。

どうかみなさまに幸あれと
年のはじめに願いを込める。

タグ:大晦日
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2012年12月25日

アドベントクリスマス


アドベントリース1.JPG ロウソク1.JPG

落ち葉を掃きながら、
今年の紅葉や照り葉は、ひときわ美しかったと思う。

購入してから6年ほど経つ葉歩花庭の楓、
今まで一度も紅葉などすることはなく、そういう品種だと思っていた。
そんな楓までもが、うつくしい黄色に染まる
うれしい冬の訪れだった。

お客さまからも「きれいね〜」とほめられ、
「よかったね、暑い夏も悪くはなかったね。」と
楓に問いかけているうちに、12月はやって来る。

やるべきことが頭をかけめぐり、気ばかりが焦るのは、
前倒しが利かない、花にせよ食材にせよ、
生ものを扱う仕事のつきものだろう。

まずは、昨年からのご依頼
神楽坂通りにある”神楽坂テラス”の
クリスマスツリーとリースを仕上げなくては。。。
このビルは、フランス生まれのパン屋の老舗PAULさんが目印。

木目と黒を基調とした、素敵なビルなのだが、
入口に、それぞれの店舗の宣伝用の立て看板が競うように並ぶのが、
いただけない。
解りやすく目立つことが目的なんだろうが、
景観としてはもったいない。

それでもPAULさんのファザードは雰囲気があるので、
この場所の飾り付けは、楽しい。
どんなデザインのものを飾るかというよりも、
飾る場の方が面積を占めるので、そちらの方が大切なのだ。

このお仕事を終えると、いよいよ葉歩花庭のクリスマス準備だ。
日本料理なのにクリスマス・・?と思われるでしょうが、
私が、本場ヨーロッパの生の針葉樹の飾りに心をつかまれてからというもの
作らずにはいられず、毎年楽しみにしてくれている方もいる。

 カウンタースワッグ手作業1.JPG カウンタースワッグ手作業2.JPG B卓リース作成.JPG

シェフが、和食に洋食の要素を取り入れるのを得意とするところもあり、
葉歩花庭のクリスマスディナーは毎年恒例となっている。

全てを手作りのするので、お店の繁忙期も重なり、体力的に年々きつくなってきた。
少しの愚痴をこぼしたら、友人が手伝ってくれるという。
ありがたい! なんといっても腕利きのベテランさん達だから、

それでも、生の針葉樹を目にした時には「なつかしい」の一言が・・・。
私にとっては毎年、針葉樹に囲まれて過ごす年末が、新鮮に映るようだ。

針葉樹特有の香りに包まれ、触れると、
この季節のさまざまな思い出がよみがえる。

20代の頃、フレンチレストランの女性オーナーと、
2階に届くほどのハシゴに登りながら、
洋館の飾り付けをして、「やるわね(笑)。」なんて意気投合したこと。

広尾のとあるレストランのエントランスを借りて、
ゲリラ的に、手作りの飾りを販売したこと。

早稲田店をオープンさせたはじめての年、
あまりの暇さに、ありとあらゆる飾りを作り、店を飾った上に、
販売する分まで仕上げてしまったこと(笑)
お客さまが、気に入って下さって、
「海外のお友達のプレゼントにする」と沢山買ってくださった。
(・・・逆輸入?)

その頃の写真を見ると、あまりのエネルギーの強さに、
「うっ!」となる。

ふり返ると、たくさんの楽しい仕事をいただいてきたと思う。
針葉樹に触れるこの季節の思い出は、いつでも活気に満ちている。


我に返ると、みなさん真剣に作ってくれている。

本当は、それぞれに自分のラインを持っている人たちなのだが、
「葉歩花庭に沿うように作る」と頼もしいお言葉。

思えば、花を通じて出逢う人は、
いつのまにか大切な人になる。
いつも私の人生を豊かにしてくれる。店クリスマス装飾2.JPG

今年のクリスマスは、
みんなのおかげで、温かい飾りに仕上がった。
針葉樹の香りと、キャンドルの灯りの中で、
お客さまも、いつもよりリラックスしているように思う。
楽し気な笑い声が、しずかに飛び交う。

よかった。

どうか来年も、充実の一年を過ごされますように。

L字スワッグとリース.JPG
唐辛子のリース1.JPG いろいろな国のオーナメント1.JPG
タグ:リース
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2012年09月18日

花日記 番外編

ひょうたん1.jpg9月は、秋祭りの季節。
私の地元、椎名町でもお祭りがある。

長崎神社礼大祭。
祭りの2日間は、近隣の駅からはもちろん、
少し遠くからも人が訪れる。

神輿の数は、長崎1丁目から千早町、南長崎まで6基ほど。
太鼓やお囃子に混じりあい、
「せいやっ、せいやっ」と威勢の良い掛け声が夜まで鳴り響く。

普段は、ひっそりとした長崎神社も、この日は、その周辺を含め、
さまざまな露店が立ち並ぶ。
ざっと、150店舗はあるだろうか。

それでも、私の子供の頃とは、変わってきている。
ひよこ売りやプラスチック製のままごと屋、
あんずやすももの水飴、ソースせんべいなどは姿を消し、
少子化のせいか、大人向きの露店の割合が増えたと感じる。

いつもは、目で楽しむことの多い露店だが、
今年夏は、なんといっても、神楽坂ほうずき市への初めての出店をしたので、
来年の参考にと、いろいろ買っては試食。お祭り気分を堪能。

これには、当たりはずれがあったが・・・やはり神楽坂の露店とは違う。
神楽坂の露店は、どこで買っても、お得で美味しいのだから。


お祭り3.JPGさて、はじめての出店のお品書きは、

三元豚と夏野菜の串焼き
天然鮪と夏野菜の串焼き
蒸し焼き枝豆
ミニもろこし など。

みなさんから 「美味しい!」 「美味しい!」 と、お声を頂き、ありがたい限り。
お得意さまからは、「これは原価割れだな!」と、

「はい、その通りです」xxx(笑)。

今回の出店にあたり、シェフをはじめスタッフは、裏方をしっかと勤め上げ、
表舞台は、私の妹と妹の友人、この2人に託すことに。

妹は、早稲田店のオープニングスタッフでもあったので、
「懐かしいお客さんに会えるといいなぁ」と幕を開けた。

私より、はるかにお祭り体質な妹。小さな期待はしていたものの、
威勢良く売りさばいていく姿には、目を疑った。
「一体、何処で習ったのかしら?」と。
妹の友人の真理ちゃんも、妹とは一味違う接客で、手際もよく頼もしい。

ならば、私もと、「いらっしゃいませ〜」、

すると2人から、笑いが 「みい姉〜!声小さい、全然聞こえない!!」
そうそう、そもそも向いてないのだから・・私は裏方に徹します(笑)。

沢山のお客さんの中に、お得意さまのお顔が、ひょっこり現れる。
「来たよ〜」と、 それがこんなにも嬉しいなんて。
極暑の中、足を運んで下さり、頭の下がる思いで、
声をかけさせていただけば、また妹が「声、届いてないよ」
(いいの!!気持ちが伝われば!この大声娘がっ!)と心の中で。

人波が、少し引くと大家さんが登場。
「今、焼いているの全部頂戴!」と盛り上げて下さり、泣けてきます。
「お兄さん男前〜」と妹。(お願いだから、黙って!)

その後も、生ビールのさし入れや、カクテルのさし入れまで、
これがまた、美味しすぎる。
妹たちのテンションは、ますます上がり。
まさに、祭り。 

おかげさまで、2日間ともに完売。

浴衣3.jpg

串焼きが終わってからも、「まだまだ、お酒を売り切るよ〜」と、
最後は「ジャパニーズ・サケ」と、
外国の方とスタンディングバーと化させていた。

あっぱれの女子力。
根性あるわ〜と、ひたすら感心していた私。

たくさんの数を売り切ることが出来たのも、
裏方スタッフの頑張りに支えられてこそのこと。

いい連携だった。
皆でかいた汗は、どれだけのものかと。

裏方はなしは、またシェフの築地日記でしてもらおう。

さて、来年はどうなることか、
進化形をお楽しみに。

お暑い中、足を運んで下さったみなさま、
誠にありがとうございました。


posted by naoko at 18:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 花日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月19日

花日記9

先日、誠文堂新光社さんから出版されている“フローリスト”3月8日発売の四月号に、
葉歩花庭の生け花が4ページにわたって掲載されました。

フローリスト1.jpg

こちらは、月刊“フローリスト”さんと“木村硝子店”さんによる企画のページです。

葉歩花庭は、今まで何冊もの雑誌に掲載していただきましたが、
撮影の中心はもちろん、お料理によるものでしたので、
今回は、はじめての花の雑誌撮影とあって、背筋の伸びる思いでした。
願うのは、いい表情をした花達に出逢えますように。
雑誌の撮影は、約一カ月前にあるもの・・時は二月。
植木鉢の花は末枯ればかり、真冬爛漫を生けたいところですが、
春を探しに行かなくちゃ。と花市場へ。
どんなに沢山の花達が並んでいても、まだまだ温室で育てられたものばかり、
山の空気や豊かな表情を持った花には出逢えずに。
ならば、南青山の花長さんへ。と。

ああ別世界。
さまざまな枝の花。そして椿の葉の表情の豊かなこと、紅葉に黄葉の照葉
常緑樹の冬の姿もすばらしや・・花より葉の私にとって、しびれる光景ですが、
いけない、いけない、今日は春をみつけに来たのだから、浮気は無しよ。
ふと見上げれば、やわらかいピンクの木蓮が・・・、まあ、なんて・・一目ぼれです。
うっとりとしてたら、お店の方からお声がかかりました。
花長さんのご主人能村さんです。
畏れ多いのですが、ご相談を持ちかけましたら、とてもご親切にとても真剣に考えて下さり、
「解っていたら、もっと仕入れておくこともできたのですが」と。
とんでもなく恐縮なお言葉をいただいて、私なんてお得意さんでもなく、はじめてお会いしたのに。
やはり素敵なお花の並ぶお店は、全てにおいて素晴らしいのです。
今日選ぶ花はもう、能村さんにおまかせしようと思いました。
何を選んで下さるのかが、とても楽しみになってしまいましたから、
次から次へと御提案下さる花達は、そうそう、こういうお花と出逢いたかったのです。という姿ばかり。
菫も菜の花も小さな鉢植えでおすすめ下さいました。ほっそりとした菜の花の健気さ。
市場の菜の花は、お浸しにして食べようかと思うくらい極太で真っすぐでしたから。
そして最後に何も言わなかったけど、最初に一目ぼれをした木蓮をおすすめして下さいました。
すばらしい。。。。

あとは、生けるのみと緊張が走りましたが、
器も定まっていなかったのに、
何だかするすると、気持ちよく花がおさまるところへ導かれていくような
自然な流れを体験しました。
ありがたい限りです。

取材1.jpg次の日の撮影も、たのしく進んで、
カメラマンは女性の三浦さん。
なかなかこの表情を捉えてほしい、この角度でというのは、難しいことなのですが、
欲しかった表情以上に仕上げて下さって、さすがの腕です。
ライターさんも女性の宮脇さん。
私もシェフも、いろいろと無駄口も多く、楽しくおしゃべりをさせて頂いたにもかかわらず、
伝えるべきところをきれいに編集して下さり、すっかり楽しく読ませて頂く読者にさせていただきました。

大関編集長も木村硝子の木村さんも、お食事にもいらして下さったり、
発売より一足先に“フローリスト”を届けて下さり、
温かいお気持ちに感謝しております。

みなさんのおかげで貴重な体験をさせて頂くことができて、
またひとつ、勉強になりました。

花を通じて出逢いを頂き、人とつながってゆくことは何よりも楽しいことです。
ありがとうございました。

■ お世話になった方々

誠文堂新光社
http://www.seibundo-shinkosha.net/

花長さん
http://navitokyo.com/03-3407-0211/ 

木村ガラスさん
http://www.kimuraglass.co.jp/

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2011年03月25日

花日記 番外編

この度の東日本大震災で、たくさんの方々の大切な命が一瞬にして
奪われてしまい、あまりにも惨い現状に、嘘であってほしいと胸が痛みます。
大切な方を亡くされたご遺族の方々へ、心よりお見舞い申し上げます。

被災された方々が、一日も早く安心できますように
そして離れ離れになっている大切な人と、早く繋がることができますように
祈る毎日です。

葉歩花庭の食卓を彩って頂いていた、三陸の漁業を支えていた方達が、
こんなにも大変な中でもひとつになり、一日も早く復興させるんだというお気持ちには、
胸がいっぱいになり、ただただ敬服致します。

黒文字1.jpgお世話になっております東北の酒蔵さんの丹精されたお酒も、これから更に種類を増やして
お客さまに紹介させて頂きたい気持ちでいます。

そして福島第一原発の最前線で、命をかけて作業をして下さっている方々、ご家族の皆様には、
画面から見守るしかできない私達は、手を合わせる思いです。
心より感謝を申し上げます。


東京で働く方々も、東北の皆さんと共に、この苦境を乗り越えるんだというお気持ちで
日々頑張っておられることが、お客様の生のお声で解ります。
地震から約一週間。皆さんそれぞれに厳しい中で仕事をされていました。
普段通りには行かない作業の対応に追われ、進めることの出来ない仕事。
でも被災者の方のことを考えたら、自分のストレスなんてと奥へ押し込み。
帰宅をすると停電のこともあります。
そのような中で、「あと一日頑張れば、葉歩花庭に行かれるという思いで来ました」と。
私達にとっても救いの言葉でした。震災が起きてから、相次ぐキャンセル。
でも仕方ない、痛手とは思ってはいけないと、そんな気持ちは掻き消すように、
床を磨き、カウンターを擦り、心を清めようとしていました。
お客さまは、「これでまた一週間頑張れるよ。こういう場所を持っている自分たちは幸せですよ」
とおっしゃって下さり。心がほどかれていく思いでした。

お客さまは更に、「皆がこのまま自粛していたら、経済の中心である東京が駄目になる。
このままでは二次災害が起こる。それでは東北を援助することが出来なくなってしまう。
僕たちは少しでも日常を取り戻す努力をしないといけない。
外食をしたり、好きな事をする息抜きを、不謹慎と思うのではなく、
そこから活力を得て、今の仕事を精一杯し現状を乗り越える。
お金を使い、世の中に回していき、東北を助けていくんだ。」と、
いつも静かで、穏やかなお客さまの力強いお言葉でした。

お話をして下さっている最中にも、トラブルの電話が鳴る中。
「これからもまた、仲間を連れて来ますから、飲食店も頑張って下さい。東北のお酒置いて下さい。」
と、お言葉を残されて帰られました。

お客さまを迎える時の私達の気持ちと、見送る時の気持ちは、
全く違うものになったことは言うまでもありません。

ご自分が大変な中でも、人に勇気を与えて下さる。
店を立ち上げてなければ、こんなにも色々な職業の方と出逢えることはなく、
こんなにも思いやりのある方が沢山いらっしゃることを知ることもなかったと思います。

これからも社会を支えている働く皆さんにとって、そしてそれを支えている皆さんにとって
ほっとして頂ける場所でありたいと願い、みずみずしい花を生け、
明日の活力になる、心を込めた料理をお届けすることに日々、精進していきます。

そして、葉歩花庭の大好きな空気感をもつ東北産の品々。
食材にも、工芸品にも、お酒にも、澄んだ水と涼しい風が感じられます。
確かな手仕事を持つ東北地方の復興を願いながら、
東北地方へ、飲食店だからこそ出来ることを考えていきたいです。

葉歩花庭の大切なお客さまであるKご夫妻さまに
この場をおかりして心よりお礼を申し上げます。

東北3 (2).jpg東北5.jpg

東北4.jpg

美しき東北の風景


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2009年11月22日

花日記8 花の人「江戸がたり」寿々方先生

葉歩花庭 019.jpg
    春は一雨ごとにあたたかくなり
    秋は一雨ごとに寒くなる

    雨風が多い晩秋だけど
    翌日には楽しみが待っている

    落ち葉の到来だ

    春の初々しい若葉とは対極にある美しさを持つ落ち葉
    それぞれの人生の足跡のような模様や色にしばし足止めされる
    そして私のポケットは、この季節どんどん膨らんでゆく

    葉歩花庭の床にふわりと撒けば一瞬で店内をあたたかく照らしてくれる
    冬のグレイッシュな風景の前の華やかな時

葉歩花庭 057a.jpgそんな楽しみな風景の中、昨年に続き葉歩花庭にて
寿々方先生の江戸がたりの公演が行われました。
寿々方先生は以前、舞踊家でいらっしゃいました。

六歳のころから、人間国宝の故花柳寿楽先生に師事し十六歳で名取りになられたそうです。
今は健康面から、やむを得ず舞踊家としての活動に終止符を打たれましたが、現在は寿々方先生の新しい道が開かれています。
今の世に希薄になっている感謝したり、感動したり、感激したりする心
思いやりや品格、真の情が描かれている江戸の物語。
葉歩花庭 058.jpgそれを、先生を透して読み演じる
「寿々方江戸がたり」 を築き上げられました。
先生のかたりを聞く度に心があたたかくなります。
本当に大切なこととは何かが伝わってきます。
そして描かれている江戸の女性に強い憧れを抱きます。
そしてその作品を手にしたくなります。
自分で読んでいても起こらなかった感情が、生きている空気がそこに存在します。
それは先生のお力です。

葉歩花庭 063.jpg江戸がたりには、先生が踊りの世界で培ってきた、私には計り知れないほどの思いが生かされているからなのでしょう。
そして今も尚、踊られていた時と同じ精神で江戸がたりを造り上げられているからだと思います。
何かひとつのことをやり続け、極めた方には、根本に揺らぎがないので、全てにおいてそれを継げることができるのだと感じます。

そしてもうひとつの楽しみが先生のお召し物。
今回はどんな着こなしを見せて頂けるのか・・・?と想像しながら先生を引き立てる花に頭を張り巡らせる。

公演中、客室に回り拝見させていただく私は、
「う〜ん紅葉の中にも,先生の隣に少し緑をさし色で加えればベストだったかな〜」
と考えながら見ていると、なんの・・なんの・・

二日目の公演には、お色直し。
松葉色の菊の花びらが一枚一枚散るように描かれた着物姿の先生。

葉歩花庭 068.jpgパーフエクト!!  流石です!

先生の美意識は、私の花さえも引き上げてくださる。
うれしい瞬間です。こういう思いがけない花に出逢えるのは本当に楽しい。
たくさんの感動を葉歩花庭に届けて下さり、光栄な一日でした。

芸術の秋をありがとうございます。

寿々方先生のHP http://www.edogatari.jp/


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2009年07月30日

花日記7 「涼を呼ぶ」

葉歩花庭 301.jpg数週間前に植え付けた夕顔の蔓はぐんぐんと伸び、夏真っ盛りという様子。
この暑さの中、元気に成長し続けるのは蔓性植物ばかりである。
道を歩けば朝顔やにがうり、千成ひょうたんにきゅうり、皆それぞれに蔓に表情があって面白い。
ここ数年、にがうりを育てている家が増えた。葉にも苦い匂いがあるので虫を寄せ付けないし、夏の間十分に楽しめるほどに収穫もできるので、人気があるのだろう。
朝顔の目の覚めるような青、ひょうたんのシャーベットのような青磁色、夜に咲く夕顔の純白は涼を運んできてくれる。場所さえあれば全て集めて緑の長〜いカーテンをつくってみたい…が、残念ながら葉歩花庭にはそれほどスペースがないので一種植えで、夕顔の花は8月中旬の頃、夜に咲きはじめ、お客さんを出迎えてくれるだろう。
葉歩花庭 243.jpg葉歩花庭の店内は100年以上の時を経た古木と土壁に包まれ、白熱灯のあかりがともる温もりが感じ
られる空間なので、夏になると少し重く感じてしまう。そこで涼感を加えていく。
窓には千葉の職人さんの作品、竹の簾を掛ける。これは矢羽模様を抜いて作られている珍しいもので、盛岡の光原社で見つけた。ここは確かな職人さんの手仕事が感じ取れる工芸品を集めてある。
瞬く間に時間が過ぎてしまう、私にとって危険な場所。
葉歩花庭 298.jpg玄関先には江戸風鈴とお得意様の硝子作家さんの風鈴を2つ並べて、ちりんちりんと軽やかな音色とカランカランと適度に重みのある音色の二重奏。
生け花の器には籠や硝子が主となる。硝子の器を使う時には水も生けるような気持で。濁っていては涼は得られない。
そこに形のユニークな葉や蔓、青い実などを生け、露を打つ。
それだけで体感温度が変わってくる。目や耳に涼しさを感じるのは不思議なものだ。
エアコンの無い時代の昔の人の暑さ対策。それは日常を大切にし、それが極めて芸術的なことが垣間見える。今の便利な生活からは生まれなかった物たち。
先日神楽坂でお祭りがあった日のこと、女性のお客様が皆それぞれに絽の着物や浴衣姿でお見えになった。しゃり感のある白い着物地とすっと結い上げられたまとめ髪に胸のすくような思いがした。
お客様が涼を運んできてくれた素敵なひとときだった。
利休の言葉から

夏はいかにも涼しいように 
冬はいかにもあたたかなように 
炭は湯のわくように 
花は野にあるように 

あたりまえのことが実は一番難しい、この言葉の意味を葉歩花庭というフィルターを通して
少しづづでも店に反映できたらと日々考えるばかりである。

葉歩花庭 272.jpg



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2009年05月10日

花日記6 皐月の花日記

葉歩花庭 204.jpg気が付けば遥か頭上に淡紫色の美しい桐の花がゆらゆらと…
いつのまにか季節は晩春に入っている!!
心地良い季節は早く過ぎゆくもの。早く植物の植え替えをしてあげなくては…とあせり始める。
人にとって心地良ければ植物にとっても最適なわけで、この季節に古い根を沢山落としても、へこたれずに回復は早い。
しかしこれが結構な重労働で、自分をエイやっと奮い立たせるのに少々時間がかかる。
私は怠惰な園芸好きだ。

“植物を育てるのではなく土を育てよ”とは園芸家の言葉。
土は弱るのではなく、年々良くなっていくものだと教えを受けた。
土は植物が自生することによってどんどん良くなる。
植物が息づいていれば、養分も水分も蓄積される。植物がないと砂漠化していく。
土は育むものである。

葉歩花庭 220.jpg葉歩花庭は土に化学肥料や農薬は一切使わない。
それを使ってしまえば土の中の微生物が死んでしまうから=土が死ぬからだ。
化学肥料を使い続けた土は一年も経てばカチカチになり、根は張れなくなり、水分を止めることのできない抜け殻のような土になってしまう。
結果、植物は弱り病気を引き起こす、そして土はゴミになる。なんと悲しい不自然なこと。だから葉歩花庭では土にたっぷりの有機物をすき込む。
植え替え時にミミズを発見すれば大喜び!土がうまく育っているバロメーターであり、ミミズは土にカルシウムを与えてくれ、土をやわらかくし微生物を住みやすくしてくれるありがたい味方。微生物を即座に殺してしまう農薬なんてとんでもない!!
大体虫も寄り付かない植物なんて危険で、私だって近寄りたくない。
少々食べられたってそれはそれでいいもの。虫喰い葉は風情ある花として店内を彩ってくれる。
そんな自然観のある花が私は好きだ。

実際悪さをする害虫と言われるものは、全体の20%ということ。
だから一番の天敵アブラ虫は根気よくつぶしたり、晴天に牛乳散布したりする。
それよりも害虫に負けない体液の濃い植物にするべく土を育てることが最も大切。
そうそう、園芸の先生が、よく弱っている植物を見ると、慌てて栄養を与えようと、植物の栄養ドリンクのようなものを与える人がいるが、それはもってのほかで、弱るということは植物の体液が薄くなっているという知らせで、そこに濃度の濃い肥料をあげても、自分の体液より濃いものは受け止められず、無駄になるばかりかますます弱ると言っていた。
これは人間の体も全く同じ原理で、疲れ切った身体に栄養ドリンクを飲んでも吸収しないということ。
今日は大変!疲れそうだという時、疲れる前に飲むことで発揮されるそうだから皆さんも御注意を!
私もシェフも忙しい日は、元気なうちに漢方系のものをゴクゴクと飲む。
それよりも疲れない身体づくりが必要ということだけど、寄る年波には勝てずに…
最近はスタッフのドリンクいらずのあっちゃんが「今日は飲みますかー?」と気に掛けてくれる(笑)

葉歩花庭 213.jpg

五月に入り葉歩花庭の山紫陽花の花芽も大きくなってきた。
今年もまた道行く人に楽しんでもらえる季節が来る。
元気に育っている植物達見ていると、植え替えてあげて本当に良かったとほっとする。

葉歩花庭 216.jpg二年半前に譲り受けた木の芽の葉が、今年は一段と青く美しい。
そこで季節ごとに作るあっちゃんのロールケーキはちょっと贅沢に“木の芽ロール”になった。
木の芽の香りを逃がさずに、尚且つ、青い味が前に出過ぎぬよう毎日調理場で研究を重ねている。
その真剣さが青葉のようにみずみずしく美しく目に映る。
ものをつくる時、常にこうありたいと思う。
葉歩花庭 239.jpg毎月ロールケーキを注文して下さるお客様から “桜ロールを神楽坂の踊りの上手な芸者さんにプレゼントしたら「神楽坂で一番美味しいロールケーキ」と言われたよ” と声をかけて下さったとこと。
あっちゃんの精神が伝わり、とても嬉しく思いじーんとした。
気が付けばリピートのお客様が多くなっている。

物事はやった分だけのことが必ずある。
そしてそれ以上もそれ以下もない。
それはすぐに表れなくてもその季はきっと来る。
だから常に考えやり続ける手を止めてはいけない。
園芸もまさしくそうだ。やった分だけ応えてくれる。
それにしても植物は他の物事よりも成果は目に見えやすく、応えてくれるのも早いように思えて
ならない。せっかちな私にピッタリなのではないかと感じている。
なので園芸は私の一生の趣味であることは揺るぎないことだと思うし、それを願っている。
これからは春だけでなく四季を通じて楽しんでもらえる、ちょっとプロ的な植栽が課題。
さあ考えていこう。
2009.皐月


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2009年01月14日

花日記5  気になる花屋 pupura moss さん

1.jpg今年も無事正月を迎えられ、ありがたい限り。
年明けの店内は静かである。
そこら中磨き上げられている客室に、生命力を感じる松、神の心臓である鏡もちが心地良さそうに目に映る。
それでより一層清浄な気持ちになる。12月の慌しさが嘘のようである。
年末はやるべき事が山積みだったけれど、今清々しい気持ちでいられるのも、今年の歳神様を無事 葉歩花庭がお迎えしたからだ、
とほっと心が落ち着く。
今年はどんな方と出逢えるだろう… 
いい出逢いにしたいと願うと気も引きしまる。
久しぶりに手が空いたので、気になる花屋 pupura moss さんのホームページを開いてみる。
こちらの店は、私が以前働いていた花屋の店長さんが立ち上げた店で、植物をこよなく愛し、美しいと思うものの見方が似ているので、ずいぶん楽しく仕事をさせて頂いた。
以来ずぅーっと親しくさせて頂いている。葉歩花庭の大切なお得意様の一人でもある。
2.jpg3.jpg
“花はその人自身を写し出す鏡”これは生け花の教えの言葉。
まさしくpupura mossさんの花はププラさんそのものである。その花の想いが伝わってくる。
生けられた花、その時その時にププラさんの思いやりは、時に男気に満ちていて(女性ですが)。
凛々しくもあり、繊細でもあり、そしてユーモアのセンスを覗かせる。この部分はとても大切だと感じている。
私の好きな物の作り手の人は、この気持ちが作品に個性として表れている人ばかり。
それは手に取る人の緊張を柔らげたり、楽しんでもらいたいというサービス精神の表れだと思うから。
そしてププラさんは、私の出来ないような花色合わせを軽やかに飛び超える。
驚かされることしばしば。いつも刺激をもらえるありがたい存在だ。
「なかなか気に入る花屋さんが見つからないなぁ」と思っている人こそ必見。
4.jpgきっと贈る方と贈られる方とを繋ぐ花に、ププラさんの思いやりを添えて生けてくれるだろう。
今は産休でお休みをとっているププラさんだが、今年の春の花が最盛期を迎える頃からお店を再開される予定。贈り花には素敵な季節。
お店のブログは更新されているので(葉歩花庭ブログ横のリンク集からアクセス可能)美しい写真と、楽しい文章が迎えてくれるはず。
お花に興味のある方、是非アクセスを!
出産をされて、これからますます花に深みが出ることを期待している私。
これからププラさんと葉歩花庭のコラボレーションをするという目標もあるし今年も粗玉磨きに励むことにしよう!

※ 写真はすべてププラモスさんによる自作・実写の写真です。


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2008年12月09日

花日記4 聖なる月の花日記

葉歩花庭 595ab.jpg

葉歩花庭 569a.jpg風が吹き、次から次へと落葉が降って来る頃。
下を向いて歩くと目移りばかり… そんな風に今年の葉の最後の姿に目を奪われていると、今年ももう終わりの月。一年は早い。
新しい年を気持ち良く迎える為に12月は何かと慌しい。
葉歩花庭の厨房ではクリスマスメニューやおせちの構想が話題となる。
「今年も○○様からおせちのご予約頂きましたー!」と嬉しい声が飛ぶ。
ありがたい感謝の気持ちと同時に幸福をお届けしなくてはと皆 力が入る。

 この頃になると店内のクリスマス飾りも大詰め。
葉歩花庭のクリスマス飾りは、クリスマスの本場であるヨーロッパに習い、生の針葉樹を使い手作りで作るため、11月に入ると少しずつ形にしていく。
よく見る日本のクリスマスの飾り方は残念ながらアメリカ式だ。
葉歩花庭 334a.jpg塩化ビニールやプラスチックでできた造花の針葉樹を使い、南国の植物であるポインセチアを赤だからとか、形が雪の結晶に似ているというだけで冬の寒空に持ってきたり、その不自然で痛々しい飾り方は俗っぽく、ちっとも心を動かされない。ポインセチアにとってみたらやれやれ…だろう。
クリスマスの本場ヨーロッパの飾り方をはじめに目にした時、なんて神聖で美しく温かみを感じられる飾り方なのだろうと感じた。
以来、心を射抜かれて早12年、毎年のようにヒムロ杉、ソナレ、ドイツトウヒ、ねずの木などフレッシュな針葉樹を購入してはせっせと作る。
切るとフワッと青い木の匂いが立ちこめる。気持ちがすぅーっと清んでいくようだ。これはフレチットアルカロイドという成分のせい。
切ることでしか外に出ない。精神安定などの効果があるそうだ。松はこの香りに更にシュンとする酸を感じる。大好きな冬の匂いの一つ。
 
葉歩花庭 364a.jpgさて、クリスマスにはなぜ針葉樹を使うのか
キリスト教が生まれる以前は神聖な木は樫の木とされていたそうだが…
針葉樹以外の木は根を切ってしまうと葉が落ちてしまうが、針葉樹は枝が天を指し、葉を落とさない為、魔力があると信じられていた。
ヨーロッパではこの針葉樹の巨木を毎年のように切る。
どこの家の主も、たとえ怠け者だったとしてもクリスマスには子供たちを連れ切り倒しに行くという。
なぜそこまで切ることにこだわるのか? 
真冬でも青々と生い茂り、生き生きとしている針葉樹を切り落とすということはただならぬ事。してはいけない事すると見えない物が見えてくるという。
普段見えない物とは=神。ヨーロッパの人々は神との交信を果たす為に木切り落とすのだ。これは日本の正月に針葉樹である切り落とした松を立てる門松と全く同じ意味を持つ。
ヨーロッパも日本も常緑信仰。そして語りつがれる意味のあるものは、いつだってシンプルで凛としていて美しい。
飾るのであるなら、その意味をもって飾りたい。
収納の中から毎年のように同じものを出して飾るのではなく、今まで生きてきた生命をもって、普段とは違う空気で年の終わりと年の初めを迎えたいと思う。
    神に見守られ、皆様のクリスマスが心温まるものとなりますように。




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2008年10月03日

花日記3 神無月の花日記

葉歩花庭 105a.jpg

10月になると秋はすっかり深まり、空気は澄み、空の青はより鮮明な青へと。
昼間でも風が肌寒く感じられる頃、街の植物も葉歩花庭の植物たちも違う表情を見せてくれる。
夏の過酷な暑さに耐え、雨風に打たれ、猫に飛び乗られたり、虫にかじられたりしながらも、春の初々しさとは違う。人で言うなら年齢を重ねてこその魅力というか、深みのある美しさにはっとさせられる。そんな中で、ほどよく食べられた虫食いの照葉などを見つけると、偉大な虫の彫刻家に拍手を送りたくなる思いである。
昨年の秋の日のこと、スタッフのあっちゃんが「見て下さい」と嬉しそうに差し出したのは、スペードの形をした葉歩花庭 056.jpg淡い黄色の照葉に、茶の大小斑点の入った葉。
どこかユーモラスでいて、おっとりした様子が温かく、美しかったなぁ…
彼女はその葉にキリンと名付けていた。まさしく!である(笑)
私が拾ってきたのは南京ハゼ、やわらかくマットな質感。それは1本の木の中で萌黄から朱色、茜、橙々、黄金色までに色彩の変化が見られる、信じがたい照葉だった。しばし落ち葉拾いに夢中になるのも無理はないほどに。あっちゃんに見せると「これはハリーポッターに出てきます」 「…?」 とそうそう、それくらい幻想的だということだ。 楽しい植物に出会う度、葉歩花庭ではあっちゃんの名珍言集は綴られていく。
葉歩花庭 085.jpg照葉と共に楽しみなのが実り。
赤い実りがあるからこそ、人も鳥も秋を心待ちにするのではないだろうか。
野ばらやナナカマド、つる梅もどきやぐみなど、実物を目にすると生け花心がプクプクと湧き上がってくる。美味しそうな色合いが、花に向かういつもの緊張感を奪うのは、それよりも本来の食いしん坊魂が勝っているのだろうと思う。 この季節、私の眼は鳥の様にすばやく実りをキャッチする。
実りは、植物が繁殖の為に、鳥達に気付かせるように種子を覆った部分を赤く染める現象。
葉歩花庭 024a.jpg花は昆虫や蝶を使い、種を作り、自分達を運ばせる為の準備期間。
そしてより遠くへ運んでもらう為に、植物は翼のある鳥を選んだ。
鳥がついばみ、その体内を通すことでしか発芽しない植物もあるほどだ。
野ばらやサンキライ、ヨーロッパのクリスマスにはかかせない、やどり木などがそう。
実物が魅力的なのは生命の豊かさを結んでいるからだとつくづく思う。
紅葉は何の為に起こるのかは、植物学的には明確な答えは出ていないそうだ。植物の創造に意味のないことは何ひとつないという。 落ちて土となる為だったら、緑のまま散っていってもいいはずだが、落葉樹はその葉を朱から紅、橙々〜黄色へと色とりどりに染めてから散る。そしてそれを美しいと感じ、引き寄せられるのは人しかいないと思う。 これだけの色彩の幅を見分けられるのは人間だけで、他の動物はそれぞれの
葉歩花庭 089.jpg世界が2色だったり3色だったりするという。
還元者ではない人間に、植物はそんな贈り物をはたしてくれるだろうか… でもそう信じたい。
    今年も素敵な照葉を見つけたら 葉歩花庭の食卓へ
    シェフの料理と共に 秋の恵みに感謝し お届けしたい


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2008年05月06日

花日記2 皐月の花日記

葉歩花庭 034.jpg大好きな季節がやって来た。
枝の花が終わり新しい緑の季(とき)
落葉樹の新しい葉が若くみずみずしく柔らかい。
まださほど大きくなってない葉は遠く見ると
明るいグリーンが霞のように見える。
夏のように覆いつくされていない枝葉の間から、ちょうどいい温度の風が景色がぬけてゆく。
自宅から葉歩花庭まで自転車で50分の通勤路。 この季節が一番楽しく短く感じる。
もう4年通い続けるこの道を 四季それぞれに違う顔を見せてくれる植物に会う為に ルートを変えることもしばしば… 例えば椿坂の定家葛(ていかかずら)その甘く青い香りは、夜の湿った空気にこそ冴えるもの、初夏になるとこの道は帰りまでとっておく。すると夜にだけ咲く鳥瓜の花にも会える。
目白の小学校の山法師(やまぼうし)。深い支脈にひらひらと反る葉、柔らかな質感の白い花は風車の形。その清潔感は遠回りしても見たくなる。光の射し込み方も丁度いいのだ。葉歩花庭 008.jpg
大隈講堂の銀杏の木。自由にのびやかに立つ高木、その表情は四季を通してドラマティック。もしこんな木の元に店があったのなら凝った外装なんてしないだろう。四季折々に見せる自然の表情にはどんなデザインを持ってきても適わないと思う。 この銀杏の木を前にすると走り去れず、立ち止まり、そしてまた振り返ってしまうほどの存在感。
男性のよそ見運転での事故は美しい女性に見とれていて…のケースが少なくないと何かに書いてあった。
私の場合だったら間違いなく植物に目を奪われてのことだと思う、気をつけなくては…
東京で育ったせいもあるからか 気がつけばいつも少しの緑を目で追いかけている。
緑は憧れ、私に安らぎと潤い、心地良さ、そしてエネルギーをくれる。だから私は葉歩花庭に緑を持ち込む。
そして店先の僅かなスペースにも緑を咲かす。花の一瞬の美しさは特別で魅力的だが私にとっては日常の健康な緑の葉が大切。
                                                        
葉歩花庭 320.jpg葉歩花庭という店名は、私の生け花の師の教えで「葉が歩んで花になるのだから大切なのは葉です」 と毎時間言い聞かせて下さった。
その言葉が元になっている。「花は文字通り草が化けたものにすぎないのでさほど重要ではない。葉という文字は草と世と木と書く。
この世は草と木でできている事を表す。」 大切な言葉。
草と木がなければこの世は存在しない。
だから今壊れかけているこの世に緑化が進められている。人間は植物に見捨てられたらこの世で生きられないのだから。
「花に魅了されたら花は生けられない。葉を見つめなさい、葉の部分(土台となる見えない部分)奥の仕事を丁寧にしなさい、すると奥行きがでる=奥の深い作品になるのだから」
この言葉は私の心にすっと深く入り込んでいった。 それは生け花以外のことでも全てに通じていると感じ、以来何をするにせよ根本の仕事を丁寧にしていこうと心がけている。
花の教えをシェフに話すと、全くもって自分の料理(和食の考え方)も同じだと言う。シェフにとってお客様の手元へ届ける皿は言わば花である。それ迄に施される作業は葉の部分に当たる。それは目立たず見えないが様々な工程が繰り返される。何かを飛ばし、手を抜き、雑な仕事をしてしまえばそれなりの味にしかならない。そしてそれは花とは言えないだろう。やはり奥の仕事が何よりも大切だ。
葉歩花庭 024.jpg会席料理も生け花も旬を素材とし、季節を反映させていく作業であり、そして一度命を絶たれた素材を自分を通し生かしゆくことに神経を集中する。
それはとても緊張する作業だ。生かすことができれば幸せを感じられる。この充実感は素晴しいがその逆もある。それにはとても罪を覚える。どうにも出来ない事もある。
それは経験として生かしていくしかない。自然からの恵みを頂き、それを生かせることが出来るように日常である葉の部分の仕事を丁寧にしていきたい。
いらしていただけるお客様へ 花を届けられるように想いを込めて…
羽深という名字を葉歩花庭という字にあてた。

<私の生け花の師>
「フロムネイチャー」主宰 神田隆先生
花を通して「自然と生命」「循環と共生」をテーマにそこから広かる多様な世界に目を向け
人々の暮らしに役立つライフスタイルの提案を行っている。

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2008年01月08日

睦月の花日記

hana1_1.jpg毎年 葉歩花庭では12/26になるとクリスマス飾りを外しすぐにお正月飾りにとりかかる。厨房ではおせちの仕込みが始まり、私は松や柳を剪定し枝ぶりを見ながら今年のデザインを考える。4回目を迎える正月前のこの風景は葉歩花庭ではもうすっかり毎年恒例になっている。切花でも正月飾りであっても自然のラインののびやかさを生かしたいからこの部分で骨格を決めていく。思ったよりもずっと伸びやかで美しい柳との出逢いがあったので今年は柳の餅花を玄関に飾ることにする。
早稲田の時に初めて作った餅花は要領が解らなく熱々の餅に火傷しそうになりながら強風の中、外で一人餅を懸命につけたことが思い出された。なんてストイックな餅花つくりだったのだろう。hana1_2.jpg思いを込める所では無かったものの華やかな(食紅のさじ加減がわからなかった!)紅白の餅花が出来、道行く人達にも楽しんでもらえた。今年はそんな教訓を生かしひっそりと美しい餅花にしたいな。そこでスタッフのあっちゃんに団子を作ってもらうことにした、この団子はあっちゃんが秋に月見うさぎを作った時のレシピで(後々語り継がれるあっちゃんの面白秘話は次回に)長芋と上新粉を半々にこねてこねて渡してくれた。ふっくらと丸く幸福そうでとてもいい、柳はその長さを生かす為、上の方から吊るすように生ける。hana1_3.jpgそこに団子を少しずつちぎり繭の形につけていく、この作業を姉と二人で進める。姉は「美味しそうだね、豊作になるね」と言いながら楽しそうにつけていく「コツは?」と聞く姉に「太い枝にはやや大きく、細い枝には小さく」と私。多分この言葉だけでいいはずだ、間隔の取り方や奥行きの出し方などはデザインのキャリアをつんできた姉には言葉にする必要はない(葉歩花庭のパンフレットやさし絵は全て姉に手がけてもらっている)。こんな作業にも確実に仕事の美しさやその人自身の感覚が表れる。hana1_4.jpg出来上がった餅花には細い枝にはホントにちいさい団子がほんの少しだけついていて美しい本当に信頼できる人である。おかげで今年の餅花飾りはあっちゃんと姉の手伝いもあり素敵に仕上がりました。 どうもありがとう
2008年いい年になりそうです。
miharu.h




餅花の由来
タグ: 睦月 餅花
posted by miharu at 11:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 花日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする