2013年01月06日

花日記13 正月の準備期間

日本の年末は忙しい。
クリスマスが終われば、ささっと、正月の顔をしなければならない。

店内はもちろん、外の花の仕事を持つ私は、
25日のクリスマスディナーのメインディッシュをお出しする辺りから、
店内のクリスマスソングは耳に入ってこなくなり、
頭の中は「もういくつ寝るとお正月〜」が鳴り止まない。

切株のリース.jpg

最後のお客さまをお見送りすると、店中のクリスマス飾りを外し、
ヒムロ杉やジュニパーべりー、檜たちに、
「お疲れ様、ありがとう」と別れを告げる。
「捨てちゃうのですか?」とスタッフが、
そうだね。切ないが、新しい生命を持ってするのが、
クリスマスにしても、正月にしても大切なこと。
造花では意味がない。

そして、三脚をかつぎ、いざ神楽坂テラスビルへ、

毎年のことながら、飾るのは心躍ること、
片付けはその反対にあるが、リセットされるのは心地よい。


さあ、これから正月の準備が始まる。
とは言え、店の営業もまだまだ、忘年会のお客さまが控えている。

一年間を労う、12月のお席は楽しげだ。
その様子に活気づく。

そんな営業時間の、合間をみての準備期間。
12月は座ることのできるのは、食事時間の10分くらいのこと。

おせちの材料が入った箱が、日に日に外に積み上がってゆく。
厨房からは、シェフの叱咤激励が響く。
「おせちには、和食のすべてが入っている。
何度も何個も連続的にこなすと、飽きたころには、
上手くなっているから」と、
スタッフは、黙々とこなしていく。

おせち札1.JPG
おせち盛り付け2.JPG おせち作成1.JPG


今年の12月は冷える、2月並だという。
外での作業には堪える。
ただ一日だけ、恵みのような暖かい日があった。
松を飾る前に神が降りてこられたのか?!
ありがたい一日に、一気に畳み掛ける。
正月花を飾る上で、最も大切なのは清めることだ。

正月花作成9.JPG 正月花作成5.JPG

思えば、早稲田店を立ち上げた2004年の暮れのこと。
ご近所の”松下”さん、
こちらは早稲田の鶴巻町で日本料理店を営む大先輩。
顧客の方の中には有名な方もたくさんおられる。
店主である松下利市さんには、さまざまなアドバイスをいただき、
たいへんお世話になった。

年末のご挨拶に”松下”さんに向かった。
その日は大晦日の午前中、おせちの受け渡し時間にあたっていた。

次から次へと訪れるお客さまに、
私たちは中に入れずにいた。
ただ茫然とその光景をすこし遠くから眺めていた。

発した言葉は、
「すごいね・・・お客さんが、わざわざ取りにきてくれるんだ。」
「うん・・」
「・・・・・」
「葉歩花庭もそうなれたらいいのにね。」

あの時の気持ちを忘れることはない。

だから、うちのおせちを受け取りにいらして下さるお客様を
清々しい場でお迎えしたい。

床を磨き、ガラスを磨き、タイルを磨いて、植木を整える。

そして、ようやく正月花を玄関に供える。
長寿を願う松、難を転ずる南天、成長を意味する青竹、
最後に「ん」が付くのは運に通じるというので、きんかんを添えて、
ずいぶん欲張りね(笑)と思いながら、
最後に、年神様に鏡餅をお供えする。
先祖代々・・の橙々、
お披露目を表す昆布、昆布の古名は広布(ひろめ)という、
柿の数は、いつもニコニコ仲むつまじくと、
2個と2個と6個で10個を供える。

玄関正月花.JPG 鏡餅.JPG

正月のひと品ひと品は、おせちも花も精神的なもの。

すべてを終え、お客さまを迎える準備が整った。

去りゆく年への感謝と、新たに迎える年への感謝を
お客さまに込めてごあいさつ。

お客さまは、取りに来てくださっている上に、
「徹夜なんでしょう!終わったから、ゆっくり休んで」なんて
どこまでも、おやさしい。
頭の下がる思いだ。

年のおわりにお世話になった方のお顔を拝見でき、
年のはじまりを、私たちの作ったおせちで祝っていただける、
なんて最良の日。

どうかみなさまに幸あれと
年のはじめに願いを込める。

タグ:大晦日
posted by chef at 01:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 花日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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