
下を向いて歩くと目移りばかり… そんな風に今年の葉の最後の姿に目を奪われていると、今年ももう終わりの月。一年は早い。
新しい年を気持ち良く迎える為に12月は何かと慌しい。
葉歩花庭の厨房ではクリスマスメニューやおせちの構想が話題となる。
「今年も○○様からおせちのご予約頂きましたー!」と嬉しい声が飛ぶ。
ありがたい感謝の気持ちと同時に幸福をお届けしなくてはと皆 力が入る。
この頃になると店内のクリスマス飾りも大詰め。
葉歩花庭のクリスマス飾りは、クリスマスの本場であるヨーロッパに習い、生の針葉樹を使い手作りで作るため、11月に入ると少しずつ形にしていく。
よく見る日本のクリスマスの飾り方は残念ながらアメリカ式だ。

クリスマスの本場ヨーロッパの飾り方をはじめに目にした時、なんて神聖で美しく温かみを感じられる飾り方なのだろうと感じた。
以来、心を射抜かれて早12年、毎年のようにヒムロ杉、ソナレ、ドイツトウヒ、ねずの木などフレッシュな針葉樹を購入してはせっせと作る。
切るとフワッと青い木の匂いが立ちこめる。気持ちがすぅーっと清んでいくようだ。これはフレチットアルカロイドという成分のせい。
切ることでしか外に出ない。精神安定などの効果があるそうだ。松はこの香りに更にシュンとする酸を感じる。大好きな冬の匂いの一つ。

キリスト教が生まれる以前は神聖な木は樫の木とされていたそうだが…
針葉樹以外の木は根を切ってしまうと葉が落ちてしまうが、針葉樹は枝が天を指し、葉を落とさない為、魔力があると信じられていた。
ヨーロッパではこの針葉樹の巨木を毎年のように切る。
どこの家の主も、たとえ怠け者だったとしてもクリスマスには子供たちを連れ切り倒しに行くという。
なぜそこまで切ることにこだわるのか?
真冬でも青々と生い茂り、生き生きとしている針葉樹を切り落とすということはただならぬ事。してはいけない事すると見えない物が見えてくるという。
普段見えない物とは=神。ヨーロッパの人々は神との交信を果たす為に木切り落とすのだ。これは日本の正月に針葉樹である切り落とした松を立てる門松と全く同じ意味を持つ。
ヨーロッパも日本も常緑信仰。そして語りつがれる意味のあるものは、いつだってシンプルで凛としていて美しい。
飾るのであるなら、その意味をもって飾りたい。
収納の中から毎年のように同じものを出して飾るのではなく、今まで生きてきた生命をもって、普段とは違う空気で年の終わりと年の初めを迎えたいと思う。