親孝行の名目で、母と旅行する機会が増えてきました。
母には「一生に一度は見たい、行きたい」という場所がたくさんあります。
今回は「本場の阿波踊りを、演舞場の桟敷席で見たい」というハードルの高いもの…
そこで! 行って来ました。真夏の徳島!
さらに、ひょんな事から、「連」に参加して踊り込みをすることになってしまいました!
この時期は市内の宿が満室で、桟敷席も個人手配は難しかったので、ツァーに参加することにしたのですが、それは「連」を結成するというもの…
参加同行者の母は、演舞場中央の桟敷席で見学できるという特典付き。
もちろん阿波踊り初体験。飛び込み参加OKの「にわか連」ではなく、地元の有名連の指導のもと、同一の衣装を纏い、彼らの先導で踊り込むという本格的なものです。
唄い文句にあるように「同じ阿呆なら踊らな損」とばかりに参加を決断したのですが…
前日のお稽古を受けた時、考えの甘さに早くも後悔(笑)
基本はどちらも右手・右足を同時に出して交互に進む簡単な踊りなのですが、鐘・太鼓のリズムに合わせて軽快に踊るのは、一朝一夕では会得できるものではありません。
腰を低くして地を這うように踊る「男踊り」は、脚力を要する過酷な踊りですが手を高く上げて振り続ける「女踊り」も想像以上にハードなものでした。
肘を肩より下げてはいけない、指先までしなやかに伸ばす、身体をひねってはいけない…等々、簡単なようで型を決めるのは大変に難しい踊りです。さらに足を揃えるのがまた困難!
リズムよく足を高く蹴り上げて、少しひねってつま先でトンと着地するのですが、これを下駄を履いて踊るのですから… 新品の下駄の鼻緒はきつくて痛いし、通常歩行すらままならないのに、つま先着地なんて絶対に出来な〜い!! 観衆の前で踊りを披露するなんて、とても出来そうに思えません…
指導して下さった「うきよ連」も一糸乱れぬ完璧な踊り。「女踊り」はラインダンスに似て全員の動きが揃うと見事な「連」になります。腕の高さ、膝の角度まで一致していて、しかも下駄の音がしないのです!
どのくらい練習すればあのように踊れるのでしょう?!
あの踊り手さんたちに先導されて、明日は自分が踊るんだわ…
後ろの方でこっそり付いて行こう。 どうか転びませんように…

徳島阿波踊りは、言わずと知れた100万人規模の大イベント。
阿波踊り会場は市内に8か所あって、4日間、同好の士や、企業・大学・団体等を単位に結成された1000を超す大小様々な「連」が、次々に個々のスタイルで踊り込んでいきます。タレントや外国人も大勢いました。
市内には至る所で鳴物(三味線・鉦・太鼓・横笛等)が響き、ものすごい熱気に包まれていました。踊る順番待ちの長い列が延々と続き、あちこちでリハーサルが行われています。
我々は市役所前演舞場というメイン会場からスタートします。1時間くらい前から待機していましたが、気温と湿度と熱気で、気絶しそうなほど暑い…
襟付き肌着・腰巻の上に浴衣を短めに着て、帯を固く巻いて、手甲、足袋まで着用しているので、汗の流れる隙間も無いほど身体は衣服で覆われています!
網笠の紐が、頬と顎と喉に食い込んで、首を左右に振るのも不自由。背中には団扇が差してあるので背筋は固定。この格好で最後まで踊れるのかしら? 下駄は変わらず痛いし、とにかく暑い…
出番が近付づくに連れ、高揚感で今にも躍り出したくなるのは、祭りの魔法なのでしょうか。
場内アナウンスが「連」の紹介をした時、賑やかに鳴物隊が演奏開始!
かけ声の「ヤットサァー」で踊りがスタートします。
大観衆の拍手で迎えられた時、気分は一端の踊り子。最初は列を揃えるように戦後左右を気にしつつ、そのうちに、ただ身体が動いて夢中で踊っていたように思いますが、桟敷席の母の笑顔だけはしっかりと見ることが出来ました。
1回目の踊り込みは無我夢中で、全長110mの会場も、あっと言う間に終ってしまったように思えました。
下ろした腕は心地よい重さ… もう下駄の痛みはすっかり消えていました。
次の会場に徒歩で向かっている最中、街中の人々が、玄関先や二階のベランダで踊っているのを見ました。オムツが取れていない幼児でも、リズムに合わせて手と足を動かしています。
その満面の笑みを見た時、徳島の人々にとって阿波踊りはDNAのレベルまで染みついているのだと感じました。そして、この祭りに参加できてとても幸せだと思いました。

後日、撮ってもらった写真を見たら、ちゃんと下駄でつま先着地出来ているではありませんか! 練習の時は絶対に出来なかったのに…
心を踊り立たせる鉦(かね)や太鼓のリズムに合わせれば、自然と型になるのだという事がよくわかりました。 「踊らな損・損!」
阿波踊りは理屈や技術で披露するのではなく、踊って楽しむものなのでした。

踊りの練習のため、名産品を食べ歩く時間は無かったのですが、踊りの待機中にお茶と一緒に配られた阿波名物「竹ちくわ」について少し…
もともと「ちくわ」は「竹輪」と書くので、「竹竹輪」ってややこしいですが、ここでは本当に竹に巻きついています。
配られた時、名物だからって「竹ちくわ」を 今 このまま食べるの?
と少しビックリしましたが、徳島では煮たり焼いたりせず、竹を持ってそのまま丸かじりするのが習慣で、おやつみたいなモノなんだそうです。
歯ごたえがあって、程よい塩加減とほんのり竹の香り… しっかりと魚の味がして大層美味でございました♪
それにしても、また増えてしまったコスプレ衣装一式。これは、また来年踊るっきゃないかしら♪
文:葉歩花庭 オーナーの従姉妹。旅好きな食いしん坊。